トム・ヤム・クン!!!!!!!!(違う映画じゃんそれ)※ネタバレ有り

 マッハ!!!!!!! はそれほどでもなかったのですが(まあそれなりには楽しめたけれども)トム・ヤム・クンは結構期待してて、でもまあマッハの事があったんで、そこまでコメディ色は強くないだろうなと踏んでました。


↓見終わってから


 今年はほんと、アジア映画の当たり年ですな!
 今年出たアクション物の中でも超一級品です。「SPIRIT」や「神話〜MITH」「Promise」も相当当たりでしたが、比肩、否、軽く凌駕しうる素晴らしいアクションを堪能いたしました。ジャッキー・チェンは超えたね。これは相当良い興行収入を叩き出すのではないかと楽しみにしております。


 相変わらず前宣伝はコメディ要素を全面に出しているわけですが、至極真っ当な(だからこそ笑えるのだけど)アクションで、本人達はギャグっぽく捉えられてるの解んないんじゃないかっていう位真面目に作ってます。ていうか本筋はシリアス。寧ろアクションシーンの凄さに笑ってしまう。


 お金を掛けられなかった頃の気持ちノウハウそのままに、お金を掛けて作っているという不思議なテイストの作品で(4分間ノーカットアクションってトニー・ジャーじゃなきゃ撮れねーし!)、そこが面白さに繋がってるなあと思いました。ユエン・ウーピンは好きなアクション監督なんだけど、良いなと思ったアクションは右を向いても左を向いてもユエン・ウーピンで、彼の存在を脅かすようなアクション監督が出てこないとやばいんじゃないの? という現状でこんな素晴らしい映画を見られたのはアクション映画ファンとしてとても幸せだし、この映画のアクション監督にはもっと活躍して欲しいな、と思いました。


 特に、素晴らしかったのが教会での古式ムエタイvsカポエイラカポエイラ使いの俳優さんも、スタントマンだけあって素晴らしい足技を披露して下さいましたし、何といってもあの水浸しの動きにくい中で、足を取られないカポエイラと足技の冴えるムエタイという闘いが観られた事自体が眼福眼福。カポエイラって本当に美しい。通ってるジムでカポエイラ練習している団体を時々見かけるんだけど、あれが実際に戦うとああいう技になるんだ! と、感激ひとしおです。
 ボートのチェイスアクションもスピード感が素晴らしく、あれはホントあんなアクションちょっと出来ないよなあ。バトル以上の見所シーンですので、見逃されぬよう。


 後、ツレが言ってたんですが、キングコング見てすげーと思ったけど、やっぱり本物(ゾウ)には勝てねーや、だそうです。トニー・ジャーより演技してたしね! 雄象の足に座る少年の映像が素晴らしくて、まだオープニングだというのに涙が出そうになりました。しかもこれがちゃんとラストへの引きになっているのが更に心憎い。象の癖に何でそんなに演技するんだ。
 象と言えば水掛祭りのシーンで、象が人混みを縫って妻を殺した象密輸業者を追いかけるシーンは、SF映画とかに出てくる怪獣やら巨大ロボットなんかよりずっとリアリティのある怖さと迫力を出していた様に思います。スピード感が凄くあるわけでもないのに、何であんなに象って怖いんだろう! こういう撮り方もあるんだ、ととにかくすごく新鮮だった。


 前のマッハ!!!!!!!はタイ文化コードというべき物が若干作品の理解を妨げていた部分がありましたが、舞台をオーストラリアに移した事で文化コードの解り難さを大幅にショートカットしたのもかなりプラスに働いていたと思います。トム・ヤム・クン観て板垣恵介先生もう少しムエタイへの扱いを良くしてくれないかな。無理か(笑)。


 全体的に映像技術がショボいのとか画面のつなぎがイマイチとかはありますが(つーか、この編集センスはっきり言って嫌い。マッハ!!!!!!!!に観られた香港映画的ウザいスローモーションが無くなったのはかなり評価を上げて良いけど)、マッハ!!!!!!! と共に、アクション映画の発展の歴史に一コマを刻まれるべき作品であると小生は確信いたします所存。ああまだこの映画については言い足りないぞ!


 トニー・ジャーはすごいアクターだけど、彼が素晴らしい俳優として活躍できたのは、マッハ!!!!!!!もトム・ヤム・クンも、彼の魅力を最大限に引き出す事がテーマにあったからであって、例えばハリウッドに進出しても、余程彼というキャラクターを熟知して、彼の魅力を引き出そうとしない限り成功しないんじゃないかなと思ったりもします。というかどうせ進出するならハリウッドより中国とか韓国とかのアジアン武侠アクション系映画とか出て欲しいです。好きだから。次は歴史物らしいですねトニー・ジャー。楽しみです。